人は本能で自然を求めている　～NATURE FIX 解説～

ハーバード大学の昆虫学者エドワード・オズボーン・ウィルソンが「人間が他の生きた有機体と情緒の面で生まれつき親密な関係をもっていること （NATURE FIX P36引用）」として提唱した説とのことじゃ。
つまり、「人間は生まれつき本能的に『自然とつながりたい』という欲求がある」という考え方じゃな

また、千葉大学の宮崎教授は「自然の中で進化してきた人類は、たとえ自覚がなくても、自然に囲まれている時がもっとも快適で心地よさを覚える 」と唱えておるのじゃ。

この本のなかでは、
人の注意力や認知機能（記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力）に目を向けた『注意回復理論』と、人の感情や生理機能（拍動や呼吸など、生きる上で人の体に起こる現象）に目を向けた『ストレス低減理論』という説に注目しておる。

『注意回復理論』では、自然は働き過ぎた脳（注意力が必要となる知的な作業）を休ませ、脳に供給されるエネルギーを回復させることで、脳と心を元気にしてくれるという考えじゃ。

『ストレス低減理論』では、「自然の中に身をおくとすぐに不安感やストレスレベルが減り、物事をクリアに筋道立てて考えられるようになり、気持ちも明るくなる（NATURE FIX P75引用）」としておる。

拍動や血圧などを計測し、自然が健康に及ぼす効果を調べる方法は、日本の研究者にも大きな影響を与えているようじゃ。

どちらの説も、自然は不安を減らし、はっきり物事を考えられるようにする（幸せで、賢くする）という点では同じなんじゃと！

その他にも、木や土からただよう物質には、多くの健康効果があるとのことじゃ！

せっかく緑が台無しじゃったな。
車やバイク、柴刈り機などの人工的な音は、人間の脳に負担をかけ、神経系にダメージをあたえてしまうんじゃと。

騒音の聞こえる場所では、眠っていても、交感神経が反応し、心拍数、血圧、呼吸が上昇したとのことじゃ！（NATURE FIX P122参照）

その他、子どもの学習に遅れ（読解力・記憶力の低下など）が出たり、高血圧などの様々な病気の原因になったりと、この本にはぞっとするような騒音の悪影響がたくさん記載されておるんじゃ。

また、川の水音が大きく響き渡る場所では、騒音があまり気にならなくなるということじゃ！

自然の景観が良い影響を及ぼしてくれる理由の一つが『フラクタル・パターン』と脳波にあると言われているんじゃ。

大雑把に言うと、『木の枝』と『もっと小さな木の枝』は同じ形になるように、どんどん細かく拡大してみても同じ形が繰り返されるという図形のことで、葉脈や樹木、雪の結晶、海岸線、植物の葉、銀河の集まりなど粗削りな自然にみられるパターンなんじゃ。（NATURE FIX P155,156参照）

フラクタルの幾何学模様を見ている時の脳波をはかった実験では、脳の前頭葉からα波が出たそうじゃ！
ちなみに、α波が出ているというのは、リラックスや集中している状態ということじゃ。（NATURE FIX P157参照）

またフラクタルを見て活性化する、脳の部位のひとつに『海馬旋回』があり、この場所は『オピオイド』が豊富なんじゃ。
オピオイドとは痛みをやわらげたり、多幸感や恍惚感を感じさせストレスを和らげる働きをもつ物質であるのじゃ。（NATURE FIX P172参照）

「緑と健康の調査プロジェクト」という研究をフィンランドで行っているトゥルヴァイネンは「自然のなかで1ヶ月に5時間すごすのが最低ライン。10時間すごせば、ますます爽快な気分を味わえるはず（NATURE FIX P191引用）」と唱えておる。

また「1ヶ月に2、3日都会を離れれば、同じ効果が得られる（NATURE FIX P191引用）」とも紹介されておる。