あなたのためを押しつけない 〜選択理論〜
- 理想のアルバム 〜上質世界にある心の内側の欲求〜
- 5つの基本的欲求 〜何を求めて生きているのか〜
- お互いの求めるものを尊重する 〜自らを満たせる人となるために〜
- 外的コントロール 〜心を断絶させる行為〜
- 最後に 〜子どもが自分で選択できる環境を〜
「俺はすごいだろう!」と力を見せつけたい人。「みんなに好かれたいわ!」と愛を求める人。「もっとスリルが欲しい!」と無茶ばかりする人もいれば、「とにかく毎日安心して暮らせれば良い」と安定を求める人もいる。
人はそれぞれ違うのに、なぜか人は自分の中の正義を他人に押しつけてしまいがちですよね。
「こうした方が良いのに…あの人は(あの子は)変わってくれない」と悩んでいる方は、選択理論を知ると「変えなくていい」と思えるようになるかもしれません。
今回はアメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士の提唱する「選択理論」を紹介いたします。
1, 理想のアルバム 〜上質世界にある心の内側の欲求〜
人はそれぞれに違う『上質世界』を持っています。
上質世界とは、人がそれぞれ描いている理想のアルバムであり、そのアルバムの中には『ともにいたいと思う人』『最も所有したい・経験したいと思うもの』『行動の多くを支配している考え・信条』などが写真のように貼りつけられており、私たちはこのイメージ写真に限りなく近い行動をとるよう選択しているのです。
上質世界にある人といたり、上質世界に近い行動や経験、上質世界にある物を所有しているときに、何よりも気分が良くなるので、現実世界と上質世界のギャップを埋めるために、私たちは自ら動き始めるのです。
2, 5つの基本的欲求 〜何を求めて生きているのか〜
人は、5つの基本的欲求を持っており、その欲求を満たすために行動しています。
- 生存の欲求…冒険せず安全で安定した生活を送りたい・規則正しく健康的でありたいという、食欲・睡眠欲・性欲にもとづく基本的欲求の1要素。
- 愛と所属の欲求…愛し愛されたい・誰かと一緒にいたい・グループで行動したいなど人間関係に重きを置いた欲求。狭く深く交遊したい人と、浅くても広く所属したい人がいる。
- 力の欲求…目標に向かって努力し得たいものを得たい・認められたい、勝ちたい、注目を浴びたい、欲しいものを手に入れたいと言った精神的な欲求。
- 自由の欲求…人に束縛されたくない・人の意見に流されず自分らしくありたい・現状に満足せず常に変化を目指したいという精神的な欲求。
- 楽しみの欲求…新たな知識を得たい・ユーモアに富み色々楽しみたい・幅広い好奇心で新しいことにチャレンジしたい・柔軟な発想で創造的な活動をしたいという精神的な欲求。
この5つの欲求には人それぞれの強弱があります(力の欲求が5で、愛と所属の欲求は2であるなど)。
力の欲求や自由の欲求が強すぎると、集団での行動が難しかったり、息苦しく感じてしまうかもしれません。愛と所属の欲求が強いと、求める人から愛や関心が得られない時に、大きな苦しみを感じてしまうかもしれません。
余談ですが、私(しぶちー代表の高橋)が診断してみたところ、自由の欲求がとても高く、次に楽しみの欲求が高いが、愛と所属の欲求が一番低いという結果が出ました。愛はともかく、所属の欲求が低いという自覚はあり、「1人で気ままに行動したい、つるむの苦手、束縛反対!」という一匹狼的な気質を裏付ける結果となりました。(人は好きですよ!)
3, お互いの求めるものを尊重する 〜自らを満たせる人となるために〜
愛と所属の欲求が強い人が、良かれと思って『いつも一緒』に居ようとしても、自由の欲求が強い人にとっては苦痛となってしまいます。力の欲求が強い人が『自分の正しさ』を相手に理解させようとしても、違う正しさを持つ人にとっては強制となってしまいます。
グラッサー博士は「責任とは、他人の欲求充足を邪魔せずに自分の欲求を満たすことである」と『責任の概念』について語っています。そうです、相手の求める欲求を無視して、自分の欲求に従わせようとすれば、お互いが不幸になってしまうのです。
しかし、相手の欲求ばかりを尊重して、自分の欲求をないがしろにすることも、良い行動とは言えません。欲求は相手に頼らずに、自分自身で満たす必要があるのです。
しかし、小さな子どもが自分で自分を満たすことは難しく、援助が必要ですよね。あなたのお子さんはどのような欲求が強いと思われますか?
愛と所属の欲求であれば、優しさとあたたかさで心を満たす。
力の欲求であれば、子どもの得意な能力を向上させたり、人や社会に貢献するよう働きかけることも良いでしょう。
自由の欲求であれば、子どもが自身の求めにしたがって、自分で意思決定や選択をする姿勢を尊重する。
楽しみの欲求であれば、子どもの好奇心や探究心を見守り、新しい体験を応援し、興味や関心をサポートする。
生存の欲求であれば、睡眠や休養をしっかりとり、子どもが安心して毎日を過ごせるよう落ち着いた環境を整える。
このように、各々の欲求に合ったサポートを行い、子どもが成長するに従って自分自身で欲求を満たせるよう、手離して行きましょう。
自分の意思で選択し、決定し、行動する『人生の舵は自分で握っている』と言う感覚は、喜びある人生を過ごすために欠かせないものです。
『人生とは、自分の信念にあった生き方を学び探究する大冒険である。他人の想いや意思に従うものではあってはならない』と私は思うのです。
4, 外的コントロール 〜心を断絶させる行為〜
どんなに相手を外側から変えようとしても、変えることはできません。なぜなら、人は自身の内側から動機付けられて行動を選択するからです。しかし、世の中には外的コントロールが多く用いられており、互いに苦しみを増大させ、人間関係を断絶させる原因となっているのです。
外的コントロールとは「批判する」「責める」「文句を言う」「ガミガミ言う」「脅す」「罰を与える」「自分の思い通りにしようと褒美で釣る」など、相手を変えようする行為のことです。
では、どうすれば良いのか?注意せず放っておけば良いのか?難しいですよね。
私自身、そういった点を試行錯誤しながら、しぶちーのあり方を常に改良しています。そうした中で「人をコントロールする」ことは百害あって一理なしとも実感しています。
子どもは大人の態度や言葉じりから「何をさせようとしているか」を敏感に感じ取っています。「何かさせられそうだ」「責められているな」と感じて心の殻をより強いものにしてしまうのです。
大人に必要な心の持ち方は「子どもの欠点に注目しない」「自分が正しい、子どもがわかってないと思わない」「相手をコントロールすることはできない」です。
もちろん、「すべて子どもの言う通り、奴隷のように従う対応」は間違っています。しかし、大人は権力者ではありません。子どもを尊重し、価値観を受け入れ、励まし、耳を傾け、互いの違いを知り、良い状態になれるよう交渉しあう、今を共に生きる同志であると思います。
そして私自身、しぶちーの子どもたちのサポーターであり、友達であり、仲間という横の関係でありながら、共に楽しみ、見守り、応援する姿勢を持ち続けたいと思っています。
外的コントロールで支配する人は、必ず彼らの上質世界から、剥がれ落ち締め出されてしまいます。学校に行かない子どもたちや、勉強をしない子どもたちの上質世界からは、学校や学びが剥がれ落ちているように…。
5, 最後に 〜子どもが自分で選択できる環境を〜
選択理論では、「過去がこうだったから」「学校が悪いから」というような『誰かや何かという、環境や性格のせいにする考え方』を否定しています。今ある状況は、自分が選択してきた結果であるとしているのです。
しかし、日本の小中高生には『自分で考え選ぶ』という選択肢が与えられているようには見えません。『自分で選ぶ生き方』や『小さい成功体験を重ねる経験』を奪わないことが、今の社会に必要なのではないでしょうか?
子どもの発案を「それは無理」とすべて放り投げていませんか?
子どもが作ったり考えたものを「もっとこうしたら?」と訂正するような、価値観の押しつけをしていませんか?
先回りして手や口を出し、子どもが失敗から考え学ぶ機会を奪っていませんか?
子どもの選択を、失敗を見守りましょう。自分で出来るんだという喜びを育みましょう。正しさを押しつけるような余計な口出しはやめましょう。彼らが自分で成長する力を信じましょう。人生を自分で切り開く勇気を応援しましょう。コントロールはやめましょう。
自分がコントロールできるのは、自分自身だけなのです。